どんな人の心にもストレートに響く言葉が一番

金田一 そう。だから僕も「自分に嘘をつかない言葉を使うのは難しくないですか?」と言ったら、「そっかな?」って。(笑)

酒井 詩人は最強ですね。

金田一 すごいことですよ。そういう言葉だけを紡いで、生きてきたわけですから。

酒井 自分の感情を誠実に伝えるためには、語彙力も必要なのかなと思いますが。

金田一 僕もそう思いました。だから次に、「語彙力というのは画素数みたいなもの。10万画素だったらクリアに見えるけど、5万画素だとぼやけてしまう。だから、語彙も多いほうがいいですよね」って話しました。われながら、この比喩は上手にできたなと思いつつ(笑)。でも谷川さんは、「ふ~ん。僕は、語彙は量ではなく質だと思ってる」と。

酒井 上質でさえあれば、数が多い必要はない、って洋服と同じですね。

金田一 たとえ小さな子どもでも、日本語に不慣れな外国人でも、質のいい言葉を使えば、日本語で素晴らしい詩をつくることができるんだって。

酒井 どうしたら、言葉の質をアップできるのでしょうか。

金田一 僕が答えるには、難しい質問ですね。ポーンと言ったときに、相手の心に響く言葉が「質のいい言葉」だとは言えるんだけど。

酒井 ついついカッコつけて、難しい言葉を使いたくなります。

金田一 それだと、若者に迎合して流行り言葉を使うおじさんと同じになっちゃうでしょう。谷川さんが作詞した「鉄腕アトム」の歌詞のようにシンプルで、年齢にかかわらず、どんな人の心にもストレートに響く言葉がやはり一番なんですよ。