――プロダクト全体に煌びやかでありながら、コンサバティブさを感じます。意図してデザインを考えてらっしゃるのでしょうか?

松本 その部分に関しては、「狙っている」というよりも、自分の素地が大きいと思います。昔から音楽が好きで、特にアシッドジャズの分野にのめりこみました。
そういった音楽の好みが焼き物のデザインに出ているのかな?と感じていますね。

――ではこの刷毛巻きの技法やコンサバティブな作風が確立したからこそ海外へ進出をしようと動き出されたのでしょうか。

松本 そこも実は偶然の要素が大きかったんです。
最初は辻調理師専門学校さんとNYのトップシェフ、デイヴィッド・ブーレイ氏とのコラボレーションレストラン企画があって「こういったお皿を作って欲しい」と頼まれたんです。

その為に作ったお皿が、今出している「JAPANシリーズ」のプロトタイプ。
その後、ジェトロさんから「NYのギフトショーに出展しないか?」というお誘いを頂きまして、JAPANシリーズのプロトタイプをブラッシュアップして、お披露目を行ったという流れです。
ちょうど10年くらい前でしょうか。

海外に持っていくとどうしても価格も高くなってしまうわけで、どうせ高くなってしまうなら、ということで前述したプラチナを塗って持っていったんです。

最初は、黒とグレーとプラチナだけの展開だったのですが、そこから様々なご縁があり、百貨店さんからのご要望もあって、どんどんJAPANシリーズのカラー展開が増えていきました。

海外で展開をする為に作ったものが国内で高い評価と要望を頂き、またその流れの中で作ったものが更に海外で評価して頂けた。それが弊社がグッと上昇気流に乗ったきっかけだったかな、と思います。

1つ1つ手作業で釉薬をかけていく