――刷毛巻きの技法は御社特有の技術だと思うのですが、それは7代目を継がれる時に既に構想としてあったのでしょうか?

松本 いや、正直それはなかったです。

たまたまだったんですよ、実は。
7代目を継いだ後、最初はカジュアルなラインナップしかなかったんです。
だから、ラグジュアリーなラインナップを作りたかった。

その構想を実現させる為に、最初は銀を塗ったプロダクトに挑戦したんです。
でも銀では焼いていくと酸化して黒ずんでしまい、うまくいかなかった。

突き詰めていくうちに素材としてプラチナに行きついたんですが、今までの技法を踏襲して作っていくと下品なくらい光っちゃって。(笑)

釉薬を薄くかけてみたり、様々なトライをしていく中で「刷毛で塗ってみたら良いんじゃないか?」とアイデアが浮かびまして、やっと成功したんです。

時間はかなり掛かりましたが、刷毛で塗る技術を更に突き詰め、今に至っています。

ゴールドの着彩の様子