お笑いのために嫌なことを始めたら嫌なことしかできなくなった
すべてに意味を求めました。
なんでスーツやなしに作業着でテレビ局に行くんや。なんで地獄の呟きにしか「いいね」がつかへんねや。番組の作家に「なんか新しいネタないですか?」って聞かれて「わかりました」言うてアルバイトに行く矛盾はなんや。
アルバイトに行かないとエピソードができない。
お笑いをするために嫌なことを始めたら、嫌なことしかできなくなった。辛いことを経験してこそ呼ばれる仕事ですから、辛いことから逃げられません。行き着く先は死ぬしかないんじゃないか。死んだら笑ってくれるんか。
多くの芸人の理想像は麒麟の川島だと思う。漫才も大喜利も裏回しもMCもできる。
若いときは顔もそっくりでいつも一緒だったのに、分身が自我を持って成功したような感じ。
その傍らで僕は、自分に噓をついて、お笑いのためにアルバイトをしているふりをして生きていたのです。
※本稿は、『脱・東京芸人 都会を捨てて見えてきたもの』(大和書房)の一部を再編集したものです。
『脱・東京芸人 都会を捨てて見えてきたもの』(著:本坊元児/大和書房)
地方タレントになりたくて吉本に来た芸人なんか一人もいません。でも、芸人を続けられるならと、藁にもすがる思いで決めていることを吉本にはわかってほしかった――。後輩「千鳥」や同期「麒麟」が売れていく中、「ソラシド」の本坊元児が焦りながら模索した新しい生き方とは? 都会を離れ、地方だからこそ見つけることができた、もう一つの芸人人生をここに!