「やりたいことをするためにやりたくないこと始めたら、やりたくないことしかできなくなった」(写真:本坊さんのインスタグラムより)
いまテレビを付ければ、お笑い芸人の姿を見ない日はありませんが、輝くスターは一握り。多くはアルバイトなどで生計を立てながら、売れる日が来るのを願い、芸を磨いています。水口靖一郎さんとコンビ「ソラシド」を組む本坊元児さんもその一人。特に本坊さんは、辛い肉体労働を記したツイートが話題となり、映画がつくられたり、本が出版されたりするなど、芸そのものより、アルバイトが注目されるように。しかし本坊さん自身は、バイト先のエピソードしか求められないことに、いつしか複雑な思いを抱くようになったそうで――。

ありがたかったサバンナさんの「前説」

ある日、本社でサバンナの高橋さんと再会しました。

昔、神戸でサバンナさんの番組の前説をさせてもらっていました。前説とは番組が始まる前に観覧のお客さんの前に出て行ってにぎやかしをやるわけです。

東京に来て、前説でネタをしている子達がいて驚きましたが、大阪では前説がネタをするのはご法度です。「誰もお前らのネタを見に来てへんわ」というのが前提なのです。ですから前説では、エピソードトークをしたり、拍手の練習なんかをしたりして、お客さんを温めてから本番を迎えるのです。

当時レギュラーも営業もなかったソラシドにとって、毎週前説をやらせてもらえるのはとてもありがたいことでした。

NGKからバスで神戸まで行くのが楽しかったし、何より仕事ができているふりができた。帰りのバスでは、八木さんの宇宙の話などを聞いていました。高橋さんは、すぐに来週の打ち合わせを始めていて、相方さんの宇宙論の横でよく打ち合わせできるなと驚きました。

特に食事に誘われることもなかったのですが、ソラシドよりもミサイルマンの方が上手いのに、僕らは約2年も前説をやらせてもらっていました。