『脱・東京芸人 都会を捨てて見えてきたもの』(著:本坊元児・大和書房) 

人が好すぎて腹立たしくなる

そしてなにより、山形県民は人が好い。気候は最悪だが、人はあったかい。人が好すぎて腹立たしくなるほどです。

僕らのラジオ番組に役場の人が自治体のイベントの告知に来たときには、「あまり『たくさん来てください』って言わないでください」と言われました。イベントなのに人が来なかったらダメだろ。

コロナ前でしたし、不思議に思い理由を聞くと、「駐車場が満車になって、入れない人がでたらかわいそうなので」と言います。なんのためにすんねん、そのイベント。盛況の裏で少数の楽しめなかった人を思う気持ち。好きです。吉本にはない発想で驚きました。

山形県民は、お金儲けすることを悪だと思っている節があります。山形に来て、車やパソコンなど何度か高い買い物をしましたが、みなさん、非常に申し訳なさそうに支払いを受け取ります。心を悪魔にしたら、タダにできてしまいそう。

マルシェなんか行っても、恐ろしく安いのです。昭和58年くらいの物価でまだやっている。

以前、蕨(わらび)農家の方と知り合いになり、畑を見学させてもらったことがありました。行って見ると5ヘクタールもあるかと思われる農地に蕨が一面にあり、草刈りだけでも大変な作業です。

この広大な農地を60歳前後のおじさん一人でやっていると言う。

「おじさんの蕨はどこで買えるんですか?」と聞くと、おじさんは「みんなに配ってる」と言います。何をしてんねんそれ。もしかしたら贖罪中(しょくざいちゅう)なのかもしれない。

でもこういう人が、山形にはざらにいます。