山形県の郷土料理「芋煮」と本坊さん(写真:本坊さんのインスタグラムより)

哀しい県庁所在地、山形市

山形県は蔵王(ざおう)、月山(がっさん)、鳥海山(ちょうかいさん)という高い山に囲まれており、電波状況はすこぶる悪いところです。

ポケットWi-Fi は移動中ほとんど輪っかがくるくると回っており、原稿を送るために平地を探すなんてこともありました。レジでのスマート決済も電波のせいでバーコードが表示されず、店員さんと気まずい時間を過ごして冷や汗をかいたものです。

また、蔵王のせいだと思いますが、僕のアパートはNHKが映りません。東京五輪の開会式を見ようとNHKにチャンネルを合わせても見えず、真っ暗な画面を少しの間見つめて「もういいよ」と中腰になり、リモコンに手を伸ばすと画面にノイズが走る。

もしやと太極拳のようにベストポジションを探る。一瞬ドラクエの曲が聞こえた。電波を拾っているのか? 針金ハンガーを両手に持ち、0.25倍速の武田鉄矢になりゆっくり動く。

直立になったところで、突然画面が鮮明に映る。電波のベストポジションだ。僕は、オリンピアンでさえ横になって聞いていたバッハ会長の長い挨拶を、世界で唯一、直立不動で見ておりました。

山形県の人口は、仙台市の人口にさえ及びません。「宮城県仙台市山形町」と漫才のつかみにすると、仙台人はよく笑います。でも、山形県民はムッとします。ですから僕はもっとムッとしました。

山形-仙台間は車で1時間もかからない経済圏で、人の往来も多いです。ですから、山形市には芸能人が来ません。ライブでもコンサートでも、仙台でやってしまうので、山形市のお客さんは仙台のライブに遊びに行くのです。

もし山形県でライブをするとしても、山形市を外して、米沢や庄内でやってしまいます。ですから山形市は哀しい県庁所在地なのです。山形県の中で一番栄えているのに、どこか緊張顔。とても優しくしてあげたい。