テレビを付けるとお笑い芸人の姿を見ない日はありませんが、スターはほんの一握り。本坊元児さん・水口靖一郎さんのコンビ「ソラシド」も、後輩「千鳥」や同期「麒麟」らが売れていくなか、なかなか芽の出ない毎日を過ごしていました。そのソラシド、吉本興業が手掛ける「住みます芸人プロジェクト」を通じ、2018年から山形県に移住することに。山形のことを何も知らないまま引っ越した本坊さんですが、山形県民と接する中で気づかされたことがあったそうで――。
人が住むとこじゃないんだず
僕は山形県のことを何も知らずに山形県に来ました。耳にしたことがあるのは、さくらんぼと米沢牛くらいで、海に接しているのも知りませんでした。40年近く生きてきて、「山形」と発声した記憶もない。
来形した当初は、「山形って実在するんだ」と、住みます芸人として声に出せないことを思っていました。
360度カメラの必要性をまったく感じない、どこを見ても同じ景色。山形市から見える小高い山々は、子供が描くような正三角形で、嘘みたいに「想像通りの山」のフォルムをしている。地形は盆地で、夏は暑く冬は寒いという盆地の当たり前が徹底された、京都のような気候です。
山形の夏の猛暑ぶりは、東北だから涼しいだろうと、軽井沢の避暑地気分だった僕にはショックでした。
当初、会う人会う人が、「冬は雪で車が埋まって何をするにも雪かきしないと身動きできない。夏は灼熱の暑さ。人が住むとこじゃないんだず」と言いましたが、決して大げさに言ってるわけではありませんでした。
昭和8年に最高気温40.2度を観測し平成19年に塗り替えられるまで、山形は日本での最高気温を記録していました。とりあえず、気候でいいことは一つも聞きませんでした。