賞はグリコのおまけ程度、何よりも自分のために詠む

俳句を続けていくための秘訣は、「自分のための俳句」を作ることだと思います。作り続けているうちに、創作の《壁》というのか、「分かれ道」がやってきますが、そこでも「自分のために俳句を作るんだ」と思い続けている人は、あまり悩まずに歩み進められます。

一方、「誰かに褒められたい」とか、「いずれ賞を取りたい」と思い始めると、自分のために俳句を作らなくなります。ここが分かれ道で、私はつねづね「誰かに評価されるために作るようになると本末転倒ですよ」「賞はグリコのおまけみたいなものですよ」とお伝えしています。楽しく作り続けてほしいですね。

そのうちに、「自分としてはこういうことを表現したいのに、なぜうまくいかないのだろう」と感じるようになったらしめたもの。そこから皆さん、意欲的に学んで上達していくのです。

俳句の作り方には、いくつか「型」がありますが、よく使う型が1つだった人は、別の型が使えるようになりたいと欲が出てきます。使いこなせる型が増えれば、折々の自分の複雑な感情を表現することも可能になり、学べば学ぶほど楽しくなります。つまり俳句というのは、好奇心と向学心を育てるツール。これは初心者も経験者も同じなのです。

次回以降、俳句が簡単にできる型や季語についてなど、楽しみながら作るヒントをご紹介します。

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