B美さんへの指導
夏井 では、次の句をどうぞ。
B美 ハイ、「子燕や音符のごとく並ぶ口」です。これは、燕のヒナたちがエサをねだって口を開けている様子が音符みたいに見えた句なんですが……。
夏井 はい、これこそが凡人ど真ん中の句です。燕や並んでいる鳥を「音符みたい」と比喩する句はごまんとあって、まさにこれが「類想」なんです。
B美 うっ、確かに誰でも考えそう。
夏井 類想のほかにも注意が必要なのが、「凡人ワード」。たとえば「木漏れ日」や「無人駅」「観覧車」も、なんとなく詩的な感じがあるので、よく使われます。ただ、「木漏れ日」や「無人駅」を使ってはいけない、ということではなくて、数音分の工夫をするだけで、オリジナリティのある句を作ることができます。
B美 なるほど!
夏井 でも一応、二人とも「梅雨空」と「子燕」という夏の季語を使っているし、意味のわかる句になっていますから、それだけで100点満点中60点は取れていると思って。初めての句としては自分をほめていいですよ。(笑)
B美 才能ナシじゃなくてよかった! とても勉強になりました。
夏井 これからもどんどん俳句を作ってください。たくさん作ってたくさん捨てる、「多作多捨」でいいんです。
A子・B美 ありがとうございました!