面接を受けたのに 私にだけ連絡が来ない

ところが、面接をしてもらえるのは75歳未満の3人だということがわかった。早生まれの私は75歳を3ヵ月過ぎている。同じ年の生まれでも山田さんはまだ74歳。しかもタイミングの悪いことに面接日は土曜、私は出勤しない日だ。やはり私はダメなのか。

それでも納得しきれず、休みを返上し、ダメ元で図々しくも面接の場に出かけた。仲間たちに交じり、すまし顔で椅子に座って説明を受けた。普段、愛想なしの桑原さんは必要以上に礼儀正しく、面接官にペコペコしていた。山田さんなど口紅を塗り直して気取っている。かくいう私も、若々しい声でハキハキと答える努力をした。

面接官はいろいろと細かく説明をしてくれたのだが、やれ住民票だ、マイナンバーだ、身元保証人だ……ずいぶんと用意しなくてはならないものがある。それでも、その日のうちにやっかいな書類をすべて揃えて提出した。

その日は筆記テストも行われた。たいしたテストではないが、山田さんが間違えた答えを書いているのが見えた。普段なら「それ違うわよ」と言うところだが、私は知らんふりをしていた。私も再就職に命をかけているのだ。とにもかくにも「働かねば」と、必死なのである。

それから数日、今日こそは連絡があるかと待ち続けた。それなのにいくら待っても、私にだけ通知が来ない。1週間待ってみて、何も連絡がなかったら電話をかけてみよう、そう決めた。幸い面接担当者の名刺をいただいている。そこには携帯番号も記してあるし、「何か聞きたいことがあったら携帯に」とおっしゃったじゃないか。

そしてとうとう1週間。仲間たちは採用の知らせをもらい、ウキウキした様子で働いている。私のひがみか、みんなの私を見る目が哀れみを帯びているような気がする。

何につけてもイライラして、つい声を荒らげてしまい、慌てて口を閉じた。「そんなにひがむんじゃないよ」。山田さんに言われてしまった。