高橋さんの分身のような「くま子さん」。だからこそ連載当初は恐る恐る書いていたそうでーー。(写真:高橋さん提供)
『婦人公論』と『婦人公論.jp』に掲載されて、人気を博したマンガ「火曜日のくま子さん」。夫もいないし子供もいない。たいした収入もない。でも仕事は好きだし、友達もいる。ひとりの時間もいい。春がくることが当たり前じゃないと、若い頃よりずっと深く知っている……。そんな40代独身の在宅ワーカー・くま子さんの日常が描かれています。くま子さんは、作者の絵本作家・高橋和枝さんの分身のような存在ですが、だからこそ、連載開始当初は恐る恐る描いていたそうです。今回、連載開始から本になるまでの経緯や、身近な出来事から創作をすることのコツをお伺いしました。

7年間も続いた上に本にまでなってびっくり

―「火曜日のくま子さん」連載の経緯を教えてください。

「火曜日のくま子さん」は元々はある雑誌の立ち上げのために描き下ろした1頁の漫画でした。その雑誌の企画自体が実現せず、漫画はお蔵入りになってしまったのですが、編集者さんが覚えていてくださって。後に雑誌『婦人公論』の連載として、2015年2月にスタートしました。

「動物を主人公にした、ほのぼのとしたものを」というオーダーだったように思います。実は最初は私の日常を描いてくださいと言われたわけではなくて、私自身も創作をきちんとするつもりだったんです。

でも連載をはじめてみたら、当時の「婦人公論」は月2回刊行だったこともあり、思っていたよりもずっと大変で。絵を描く時間がないというよりも、すぐにお話が思い浮かばなくなってしまって、まさに自転車操業。

『火曜日のくま子さん』(著:高橋和枝/中央公論新社)

苦しくなってその時あったことや考えていることを描いたら、「これで大丈夫です」と言ってもらえて。結果的に私の日記のようなスタイルに落ち着きました。

でも、自分の日常を描いて楽しんでもらおうなんて、巨匠にしか許されないことなのでは!? と恐る恐る描いていたのですが、なんと7年間も続けさせて頂いた上に本にまでなって、嬉しいというよりびっくりしました。