今回インタビューを担当した長谷川まさ子さんと。「悠里さんのプロ仕事を近くで見ることができたから、私は今も現場にいます」(長谷川さん)

番組にかかわる人を大事にしたい

僕はいつも、スタッフを可愛がることは、聴いてくれる人たちを可愛がることだと思ってやってきました。スタッフを優先して大事にすると、みんな一所懸命に仕事をしてくれるし、それは聴いている人にも伝わりますから。

レストランだって、社長が味見もしないでシェフをいじめてたら、「適当でいいや」って変な料理を出して、お客が来なくなっちゃうじゃない。一所懸命スタッフを可愛がることが、料理を一所懸命作ることにつながり、お客さんの獲得にもつながっていく。

僕はラジオ番組の最後に必ず出演者とスタッフ全員の名前を読み上げていました。限られた放送時間のなかでもそれを続けたのは、やっぱりスタッフを大事にしたいからです。たとえばね、息子が東京に出ていって、しっかりやってるかなと親は心配しているわけ。

ラジオで息子の名前が呼ばれただけで、親は嬉しいし安心するのよ。本人だって丁寧に仕事するようになる。永六輔さんが生前に「悠里さんだけだ、ああいうことをやるのは」って。

ゲストをお呼びするときも、その人を一所懸命大切にします。歌手の方なら、新曲を少しでも売りたいという気持ちで来ているわけだから、僕のほうも事前に曲を聴いて、売れるように紹介してあげなきゃいけない。

お芝居も前もって観に行って、「これは観てもらいたい」というのを紹介する。作家さんがゲストならば何冊か作品を読みます。

そうやって、こっちが一所懸命に準備して紹介すれば、ゲストも何か面白い話をしなきゃって、考えてくれるの。これが番組の優しさにつながると思うんです。

作家の大江健三郎さんなんて大御所がゲストに来てくれたこともありましたね。息子の光さんと僕の番組を聴きながら朝ごはんを食べていたとかで、ご本人から出演したいと。なのでこちらも気軽に「ノーベル賞を受賞したノーベル健ちゃんが今日のゲストです」なんて呼びかけたけど、先生は喜んで笑っていらした。

「小説はさっぱりわかりませんでした」と言うと、「自分の本は人にわかるように書いていないから。でも、次の本はわかりやすいですよ」なんて、うまいこと言うんだ。