「皆さんから『悠里さん大丈夫?』と心配される前に、マイクを返納しようと考えました」(撮影:吉場正和)
2022年3月26日に、36年続いた長寿ラジオ番組『大沢悠里のゆうゆうワイド土曜日版』(TBSラジオ)が惜しまれながら終了しました。メインパーソナリティを務めた大沢悠里さんは、アナウンサー生活58年! 引退したばかりの大沢さんが、ラジオに捧げた人生を振り返ります(構成=山田真理 撮影=吉場正和)

一発勝負の面白さ

2022年3月26日に『大沢悠里のゆうゆうワイド土曜日版』(TBSラジオ)の放送を終えて、今日が4日目。現在の心境はといえば、とにかくほっとしています。

1986年に放送開始した『大沢悠里のゆうゆうワイド』は、30周年を迎えた2016年まで続きました。平日の5日間、朝8時半から13時まで、4時間半の生放送です。本当は6年前にすっぱり身を引こうと思ったのだけど、ありがたいことに「やめないでくれ」って熱烈なお手紙が届いたり、泣きながら局に電話をくれる方もいて。それで週1回、土曜日に2時間だけの放送を続けさせてもらいました。

「まだまだできるのに」と言われたりもしますけど、僕ももう81歳ですよ。若い頃のようにぺらぺらと饒舌にしゃべるのはさすがに難しいですし、記憶力も反射神経も鈍っていますからね。車の運転だって、深刻な事故を起こす前に免許を返納するでしょう。皆さんから「悠里さん大丈夫?」と心配される前に、マイクを返納しようと考えました。

86年の放送開始から数えると、通算8105回。言うなれば8105段の石段を一歩一歩、先を見ないで上がっていって、気が付いたら神社かお寺の境内にたどりついた、みたいな感じですね。振り向いてみれば、よくまあ登ってきたなあと自分でも思います。

64年にTBSに入社してアナウンサーになってから、かかわる番組はほとんどが生放送。自分が出なきゃ放送は始まらないし、途中でお腹が痛くなるわけにもいかない。ずーっと気を張り詰めてなきゃいけません。

途中でへばることもなくやれたのは、健康でいられたこと、そして聴いてくださった皆さん方と、スポンサー、スタッフ、スタジオをきれいにしてくれる方、警備の方……いろんな人の力があってこそです。