「一度すべてを失ったからこそ今強く思うのは、とにかく自分はお芝居が大好きで、ずっと携わっていきたいということです」

自分もまだまだ頑張らなきゃ

『冬薔薇』のお話をいただいてすぐに、阪本順治監督と2人きりで話す機会がありました。それこそ僕の生い立ちから、家族との関係、ネットに書かれていることまで。監督はその日の会話をもとに、今作のプロットを書かれたそうです。

僕が演じた渡口淳は、25歳になる今も服飾の専門学校に身を置き、将来のビジョンもないまま地元の不良グループとつるんでいる青年。幼少期の出来事をきっかけに両親とも心が離れ、寄る辺なさを抱えています。

自身の現状を見ようとしない淳の生き方は、すべてが僕の実体験に基づいているわけではありません。生きてきた環境も大きく違います。でも理解できる部分はたくさんあって。

たとえば映画の後半で、小林薫さん演じる父親と淳が対峙するシーン。

お互いちょっと心を開けば気持ちが通じ合うのに、淳は思いを素直に伝えられず、父親も息子と正面から向き合おうとしない。僕自身にも、父親と腹を割って話そうと思ったのに、父が目を合わせてこない感じとか、互いに会話がうまくまわらない、という実体験があります。

それから、淳が日頃からもう少し心を開いていれば、手を差し伸べてくれる人がすぐ近くにいるのに、その存在が見えていなくて孤独を感じてしまうところ。やはり自分にも似た経験があるので、共感しました。