私は世界一幸せな母親だ
包丁研ぎも欠かさないので、わが家の包丁はいつも切れ味がよかった。長男いわく、マザコンなのではなく、趣味の時間を家族に費やしていただけだと言う。
うっかり私が寝坊してしまった朝、長男が夫の弁当を作っていた。「ごめん」と謝ると、「冷蔵庫のもので適当に作ったよ」。私が仕事からお腹を空かして帰ると、ご飯ができ上がっていたこともある。何とも言えない優しい味だった。その彼が、大学を卒業して実家から巣立っていく。
家族でお祝いの会をした。実母が「あんたは長男に助けられたね。息子に感謝だね」と言ったが、ホントにそう。私は世界一幸せな母親だ。今までありがとう。
こんなダメ母に呆れながらつきあってくれて。就職おめでとう。これからは社会の中でたくさんの人と出会い、たくさんの人の小さな力になれることを願っているよ。
私も息子のいない生活に慣れていかなくちゃ。