あなどれない子どもの観察力

てぃ先生 僕らは五感がなくては生きられませんよね。外に出るというのは、最も手っ取り早く五感をフルに働かせる方法です。だから保育園や幼稚園では、毎日必ず外に行く。それぐらい、野外に出るのは子どもにとっていいことなんです。

季節によって変わる景色を目で確かめられるし、風が強い日もあれば弱い日もあって、鳥の鳴き声も日によって違う。夏と冬では匂いも違います。雨が降りそうなときには湿っぽい匂いがしたり。

人生を生き抜くためには、五感を大きく働かせる必要があって、小さい頃から自然に触れて五感の働きを鍛えておくことは、生きるための地固めとしてすごく大切です。人間としての土台を固めるために外遊びがあるのだ、と考えてもらえばいいのではないでしょうか。

あと、日々自然に触れていると、ちょっとした変化に気づきやすくなりますよね。昨日までいた鳥がいなくなったとか、数日前までたくさんあった樹の葉っぱが落ちてきたとか。季節の移ろいや日々の自然の変化に敏感になっていると、いざ机に向かったときにも、算数の問題でも、「あれ?」と違いに気づける、疑問を持てるようになると思うんです。

外遊びが「人間としての土台を固める」とてぃ先生。外で感受性が磨かれると、机に向かった時も「あれ?」と疑問を持てるそうです(写真提供:株式会社こうゆう)

高濱 気づく力は勉強にも必要だからね。子どもは本当によく気がつくし。

てぃ先生 僕、それで子どもと喧嘩になったことありますよ。僕は気づかなかったのですが、散歩中に通り過ぎるある家の塀に人形が置いてあったと言い張る子がいて。あんまり言い張るので僕も意地になって「絶対なかった!」と言っていたら、他の先生が「いや、あったよ」と。僕が間違っていたんです。子どもの観察力ってすごいですね。

あるときなど、ああ疲れたなあと思いながら教室に入ったら、3歳の子がやってきて、「先生、生きてるの楽しい?」と聞いてきて。とっさに「楽しいよ」と取り繕ったのですが、「そんなふうには見えない」と言われてしまいました(笑)。

高濱 アンテナ張りまくっているからね、子どもは。僕なんて、あるとき女の子にくんくん嗅がれて、「先生、今日疲れてる?」と言われたことがあるよ。

大人になると正解を与えられ慣れるからわかった気になって、五感で捉えることをやめちゃうんだろうね。