大人はちょっと察しが悪いくらいでちょうどいい
てぃ先生 子どもって、クイズも好きですよね。「赤くて丸い食べ物なーんだ」といった答えの決まったなぞなぞも好きですし、答えの決まっていない問いに自分なりの答えを出すのも大好きです。
僕がよくやるのが、絵本『おおきなかぶ』を使ったオリジナルクイズです。物語では最後にネズミがネコを引っ張って、ようやくかぶが抜けます。そこを「今日はネズミが引っ張っても抜けなかった。じゃあ誰がネズミを引っ張ったらかぶは抜けるでしょう?」と言うと、ずっと動物できているから「ゾウさん」と言う子もいれば、「仮面ライダー」と変化球を出す子、「トラック」や「ショベルカー」を持ってくる現実的な子もいる。答えが一つではなく、考える余地のあるクイズは、子どもたちの反応がいいですね。
高濱 僕もそういうの、大好きでしたね。なぞなぞも好きだったけれど、いろんな答えがありうるクイズは、何よりおもしろかった。
てぃ先生 自分の答えを聞いた大人が「あー、そういうのもあるか!」と驚いたり喜んだりしてくれるのがまたうれしいんですよね。でも子どもの柔軟な発想を楽しめない親御さんは、「いや、動物じゃないと」と縛りをかけてくる。「ショベルカーを持ってきちゃダメでしょう」とか。
高濱 「ここでの質問の意図はそうじゃないよ」とか言い始める(笑)。
てぃ先生 そうそう。でも子どもが不思議な回答をしたとき、「どうしてそんな答えを思いつけたの」とか「なんでそんなふうに思ったの、すごいね」と言ってやると、子どもはすごく喜びますよね。前回例にあげた「指パッチン」と同じことですが、褒めようものなら、1週間はパッチンパッチンやってますよ(笑)。それを怒る先生もいますが、僕は「じゃあ廊下で一緒にやろう」ってその子と廊下に出て密かにやっちゃうタイプで。
高濱:そのほうがおもしろいし、長い目で見れば、その子の自己肯定感を育てることになるんですよ。
てぃ先生 ちょっと難しいクイズや問題のときには、子どもたちに「先生よくわからないから、一緒に考えてくれない?」ってお願いしたりもします。そうすると子どもは僕を助けようと、すごく頑張って試行錯誤し始める。子どもって、大人がちょっと察しが悪いぐらいのほうが、一生懸命やろうとするじゃないですか。
高濱 それはもう芸風だよね。そういうのができる先生って、豊かだと思うな。ノウハウというより、常に子どもの心の躍動に向かっている、ワクワクを大事にしているからこそできることなので。
てぃ先生 兄弟喧嘩も、大人がこれ喧嘩になるな、と察知して止めてしまうのではなく、気づかないふりをして喧嘩させたほうがいい。弟がどんなに親に頼りたいオーラを出してチラチラこちらを見ていても、知らないふりを続けていると、そのうち兄弟同士でどうすれば仲直りできるかを考え始めますから。