大日本帝国憲法下で女性は選挙権もなく、財産を自由にする権利も、意見を主張する権利も奪われます。薩摩出身の新政府の役人、吉井友実という男性は、宮中女官を一度全員解雇します。そのことについて「数百年来の女権、唯一日に打消し愉快極まりなし」と、喜んでいる記述さえあります。そうして歴史を見てみると、伝統的に女が「大人しい」のではなくて、権力によって「わきまえろ」と言われたから、従わざるを得なかった。

その影響はいまだにあると思っています。昭和生まれの私もいざ行動するときに「女だし、わきまえなきゃ」と、無意識にブレーキを踏むことがある。今回の作品で描いた女性たちに叱られそうですよね。

「伝統的に」という言葉で語るなら、「日本の女は大人しい」よりも「日本の女はたくましい」歴史のほうが遥かに長い。歴史を振り返ると、先人の女性たちから「行け!」と応援されているようで勇気をもらえます。最近の世の中を見ていると、令和の今は女性たちの活躍において、時代の転換期なのかもしれません。

 

『女人入眼』(著:永井紗耶子/中央公論新社)