身近な植物だけど、安易に近づくと危険!(イラスト:ウラケン・ボルボックス)
様々な生きものに害を与える「毒」。日本薬史学会副会長・日本薬科大学客員教授で、『毒と薬の世界史』など、毒にまつわる著書を多数持つ船山信次先生によると「私たちの近くにも、人に害をもたらすような強い毒をもっている生きものがたくさん潜んでいる」とのこと。今回、そんな毒をもつ生きものの中から、身近なところに生えるクリスマスローズとスイセンを解説してもらいました。

庭先に密かに咲く毒の花にご用心!

クリスマスローズは、ギリシャ語の「ヘレン(殺す)」「ボア(食べ物)」という意味から「ヘレボルス」とも呼ばれる、毒あり植物です。全体に毒があり、とくに根、茎は強毒。

体内に毒が入ると心臓がバクバク、めまい、吐気、腹痛などが起こります。草の汁がつくだけでも、皮ふがヒリヒリしたり赤くただれたりすることも。ガーデニングなどでクリスマスローズをさわるときは、手袋をして作業しましょう。

紀元前595年のギリシャで、デルフォイ軍とキラ軍の間で戦いが起こりました。第一次神聖戦争と呼ばれるもので、はじめて毒兵器が使われた戦いと言われています。

使われたのは、根、茎に強い毒があるクリスマスローズ。デルフォイ軍は、川の上流で刈り取ったクリスマスローズを水につけました。川の水に毒が溶け出し、流れていきます。

川の下流にいるキラ軍は、いつものように川の水を飲みました。すると、兵士たちはお腹をこわして次々と倒れ、戦いに負けてしまったのです。

いつの時代も使いようによっては毒は怖いもの。どんな状況でも、悪意のある使用は絶対に避けなければなりません。

クリスマスローズの毒で勝利をおさめたデルフォイ軍(イラスト:ウラケン・ボルボックス)
クリスマスローズ
【分類】植物・キンポウゲ科
【生息地】ヨーロッパ~西アジア
【大きさ】高さ15~30cm
『すごい毒の生きもの図鑑 わけあって、毒ありです。』(監修:船山信次 絵:ウラケン・ボルボックス/中央公論新社)