孤独な試練
次に問題となるのは語学力。そもそも高校の英語の成績が悪かった。私の英語力の大半は学生時代にアジアを放浪する中で、死なないために身につけたサバイバルイングリッシュ。気合で通じる英語しか話せない。たまに、仕事で海外に行くが、多めに「アハーン」と相槌をうって英語が話せる風にしていた。
まず自分の英語力をはかる試験を受けた。すると浦島太郎のような出来事が次々とおきた。たとえば TOEFL という米国留学に必要な英語試験。かつて手書きで郵送だった申込は、全てオンラインに。英語でアカウントを作り、日付や会場を選ぶだけで時間がかかった。そして、腰を抜かすほど驚いたのは試験当日だ。会場にはいると、一人一台 PC があてがわれ、ヘッドセットをつけさせられた。
「試験、はじめ」とかの言葉は一切なく、五月雨式に入室した順番にバラバラに試験がはじまった。内容は「話す、聞く、読む、書く」の4つだが、ランダムに着席するため、私が文法を解いている横で、隣人が大声でスピーキングを始めたりする。頭が混乱してプチパニックになった。25 年ぶりの英語の試験は、記憶がなくなるほど苦しく、成績は散々だった。でも、ここから始めるしかない。朝晩、寸暇を惜しんで英語を勉強する日々が始まった。
仕事と家事と、小学生の子育てをしながらの勉強はしんどかった。一人ではやる気が出ないから安いオンライン英会話を探したり、英語スクールの集中パックを受講して20代の学生さんと切磋琢磨したり、深夜に CNN をつけっぱなしにして耳を鍛えたり。