フ・ル・ブ・ラ・イ・ト
そこには「専業主婦が40代で離婚し、アメリカに留学し、ケーキと出会いお店を開いた」という、大人女子の留学成功体験が書かれていた。まるでおとぎ話だ。読んだ瞬間、目の前で、カボチャが立体化して馬車になり、御者がガラスの靴を持って私の前に立っていた。あとは、自分に魔法の呪文「ビ・ビ・デ・バ・ビ・デ・ブー」をかければ夢が叶うかもしれない!探していたのは、これだ!諦めなければ必ずやれる!変な自信がみなぎってきた。そして、再び「おとな、留学、助成金」の検索を再開した。
すると、ほどなくある言葉がヒットした。“フルブライト”。「これってたしか…」それは、年齢制限がなく、権威ある奨学金、“フルブライト奨学金”だった。呪文は決まった。「フ・ル・ブ・ラ・イ・ト」。ここから留学への長い道が始まった。
改めてフルブライト奨学金を説明すると、第二次世界大戦後、米国のフルブライト議員が発案した基金で「世界平和のためには人と人との交流が最も有効」との目的で、世界で最も知られた権威ある交流事業だ。日本を含む約160ヵ国以上からの約40万⼈に、研究や教育の機会を提供してきた。
ここで私は、フルブライトの凄さに躊躇した。奨学金を受けた方々が、学者や、政治家、作家など、立派すぎたのだ。さらに大人が対象と言っても、教授や博士課程の院生が中心で、20 年以上も前に、女子大を卒業しただけの私が応募できるのか?と、弱気になった。でも、諦めたらだめだ。住宅ローンや学費の積み立ても抱えている。留学するには他に道はないと腹を括って準備を始めた。
唱える呪文はただ一つ。「フ・ル・ブ・ラ・イ・ト」だ。