我慢の先には幸せが待っている

40代くらいまでは、パフォーマンスを維持するために体を鍛えなくちゃと考えていました。でも次第に、体を鍛えることと連動して心が鍛えられるという点が大事なんだと思うようになったんです。

僕は「できるようになるまでする努力」と、「継続するための努力」が揃ってはじめて人は成長するのだと思うのですが、いずれにしても無理は禁物。いきなり重たいダンベルを持ち上げても筋肉を痛めてしまうか、つらくて続かないということになってしまうでしょう? 結果、敗北感しか残らないというのでは本末転倒ですよね。

それから運動は「8・9・10」が大事。たとえば腹筋運動の1回目から7回目までは、8・9・10回目を迎えるために行うものと僕は考えています。1回目と変わらないフォームをラストまで保つことで腹筋が鍛えられる。人生も同じなのではないかなと思うのです。つまり誰の人生にも試練があるけれど、我慢した先には幸せが待っていると。たやすいことではありませんけれど。

乗り越えるのが一番難しいのは、お世話になった人との死別でしょう。僕もジャニーさん、メリー(喜多川)さん、作曲家の筒美京平さん、音楽プロデューサーの酒井政利さんなど、郷ひろみを作ってくれた方々とのお別れが続き、とても寂しいです。

でも、ことさらナーバスになることはありません。それはきっともう自立しているから。ご恩に報いることができるよう、これからも精進していこうと誓いを新たにしています。

とはいえ人ってみんな、心に穴が空いているのではないでしょうか。その穴を小さくすることはできても、完全になくすことはできない。それでいいと僕は思うのです。だからこそ人の痛みを想像することができるのだし、風穴がないと向かい風をモロに受けて飛ばされてしまうかもしれないし。