頑張っても、期待された通りに動けなかった

学生時代、僕はペーパーテストのような個人プレーでは優等生でした。でも集団の中では、先生もびっくりするほどの劣等生だった。

たとえば文化祭の片付けのとき、何をしていいかわからなくてウロウロしていたら、それを見た先生が「世の中で生きていくには、集団の中で自分は何ができるかを見つけて動いたり、何をしたらいいかを誰かに聞けることが、数学や英語ができることよりも大切だ」と、クラス全体に向けて話したことがありました。誰とは名指ししなかったけれど、明らかに僕に向けて言ってるなー、と。

大学では物理学を学び、そのまま大学院に進んで地震の予知に関する研究をしていました。院に残って研究者になる道もあったのですが、周囲に自分より優秀な人が山ほどいましたし、研究は楽しかったけど、自分がやる必要はないなと思っていました。

そういう人間ですから、いざ就職しようと思ってエントリーシートに長所を書いていく作業は本当に苦痛でしたね。自分で自分のことを良く言うなんて、ものすごく気持ちが悪かった。仕事ってそういう場面が多すぎるというか、「自分はこれだけ仕事ができます」とアピールしなきゃいけない。そういうことが当たり前になっているけれど、僕には合わなかったのです。

結局、教材を編集する出版社に入社したのですが、黙々と仕事をしていると、「チームワークを重視しろ」と言われる。会社の飲み会で空きかけたグラスに気付いてお酌をすることができない。

自分なりに努力はしたつもりです。駄目だと怒られれば、自分に悪いところがあるはずだから直さなくては、次は頑張ろうと思って動いてみるのですが、気が回らないし不器用なので、どうしても周りを邪魔してしまう結果になる。