1952年2月5日、ジョージ6世崩御に伴い、25歳の若きエリザベス2世が誕生。翌6月2日に戴冠式が行われた(写真提供:アフロ)

女王は今年在位70年を迎えた。英王室史上、最長である。96歳という年齢も、世界の現役君主としては最高だ。イギリスは第二次世界大戦で勝利したものの、疲弊してしまった。1947年、フィリップ殿下との結婚時のウエディングドレスは、一般国民と同じように配給券を集めて用意したという。国民と苦楽を共にしてきた歴史の証人なのだ。

女王の政治通は広く知られているが、それは毎週、首相と話を交わしてきたからかもしれない。チャーチル首相から現在のジョンソン首相まで14人と向かい合った。アメリカ大統領も14人が就任したが、決まって英王室に挨拶に来る。国賓として訪問したのは13人で、ケネディ大統領暗殺後に大統領になったリンドン・ジョンソンのみが顔を見せなかった。

外遊は100ヵ国以上で、公務は2万件以上をこなした。肖像画は7歳の時から今日まで200点以上だ。植樹した木は世界に1500本以上が育つ。一人の女性が生涯に成し遂げた業績にただ圧倒される。

王室は「君臨すれども統治せず」の通り、表立っての政治介入はない。それでも国と国、人と人を結びつける役割を果たしてきた。かつて植民地であったアイルランドには「巡礼の旅」を行い、晩餐会ではゲール語で流ちょうにスピーチ、アイルランドの人を感激させた。

来日の際、皇室主催の宮中晩餐会でのスピーチでは「互いに大陸のそばの小さな島国。お茶が好きで庭を愛する。車は共に左側通行です」とユーモアをこめて共通点をあげ、「互いに学びあえる間柄」と第二次世界大戦でこじれた両国の和解への道を示した。