能員は「ジャージ姿」で乗り込んだようなもの
さて、ドラマの第31回ではついに比企能員が討たれましたね。この事件については、どうにも分からない重大な謎があるのです。
源頼家が病に倒れて、意識が戻らない。彼の後継を巡って、北条時政と比企能員は激しく対立します。この状況下、時政が自邸に能員を招く。
どう考えてもワナですよね。それなのに、能員はろくなボディガードも連れずにのこのこ出かけていき、案の定、殺害されてしまった。ちょっと信じられない。それでも、戦いに命を懸ける武士か!
でもこれ、幕府の歴史書である『吾妻鏡』に、まさにそう書いてあるのです。
能員は「平礼烏帽子」をかぶって時政邸に赴いた。「平礼」はひれ、と読む。
ノリのついてない、なよっとした烏帽子。外出用ではなく、普段使い。当時のファッションで、烏帽子は最重要アイテムです(博打うちがすってんてんになったときは、ふんどしは取られても、烏帽子は死守します)。
衣服とトータルでコーディネイトしていましたから、平礼烏帽子を選択した能員は、例えばジャージ姿で敵の本拠地に乗り込んだに等しい。
そんな馬鹿なことはないだろう、と思いますよね。ところが、証拠があるのです。