同じ景色でも、「惚れレンズ」をつけているかどうかで、見えるものが全く変わってしまいます(写真提供:PhotoAC)

「惚れレンズ」越しに対象を見てみよう

誰かをホメるときにまず重要なのは、ホロレンズ(複合現実体験用ゴーグル)ならぬ、「惚れレンズ」越しに対象を見ることです。つまり、相手が「惚れどころ満載」という前提に立つのです。そうすることで、抽出できる相手の魅力や、出力されるホメ出しの量や質が変わってきます。

『(500)日のサマー』(マーク・ウェブ監督)という映画をご存じでしょうか。端的にいうと、トムという男性が、サマーという女性を好きになる恋愛映画です。

この映画には、印象的なシーンがあります。光が注ぐ美しい空間の中。スローモーションで、サマーがやわらかな笑顔を見せる。そこに、トムのダイアログが入ってきます。

あの笑顔 髪の毛 ヒザも好きだ
胸元のハート型のアザも 話す前に唇をなめる癖も好きだ
笑い声も 眠っている時の顔も

映画史に残るポエティックなシーンです。ところが、サマーとの関係性が悪化すると、状況が変わります。先ほどとまったく同じサラの笑顔シーンに、トムのまったく別のダイアログが重なります。

俺はサマーが嫌いだ
不ぞろいの歯と60年代風の髪型も嫌いだ
骨張ったひざも ゴキブリのような形のアザも
話す前に舌打ちする癖も 高笑いも嫌いだ

そう、同じ景色でも、「惚れレンズ」をつけているかどうかで、意味が変わるという象徴的な例です。

「惚れレンズ」をつけているとき、長所は目につきやすい。だから「ヒザも好きだ」なんて言えちゃうわけです。それだけではなく、短所さえも長所にひっくり返してくれます。無双モードです。無限にホメ出しできます。

逆に、惚れレンズをつけていないと「胸元のハート型のアザ」も、「ゴキブリのような形のアザ」に変換されてしまうわけです。