「惚れレンズ」のつけ方
では、どうやってこの「惚れレンズ」をつけるか?恋をしていないと無理じゃない?と思うかもしれません。
いえ、もっと簡単です。
「惚れレンズをつけるぞ」と自覚的になればいいのです。そんな観念的なこと?と思われるかもしれませんが、この姿勢こそがホメの第一歩なのです。
脳神経科学の分野に、「効率的選択」と呼ばれるものがあります。わかりやすく言うと、人が何か特定のことに注意するとき、脳もその情報を得ようと一生懸命働く、という話です。
一時期私は、ある広告のアイデアを出すために、「街中にある赤いもの」を探したことがあったのですが、看板やポスト、お店のひさしの色など、日頃気づいていなかった赤いものを多く発見できたという体験があります。
自分に赤ちゃんが生まれると、街でも赤ちゃんがよく目にとまる、なんてこともありますよね。これがまさに「効率的選択」です。今欲している大切な情報を脳が選び取り、感覚野から知覚野へと受け渡す状態です。
脳は、不平等に情報を受け取っています。だからこそ、脳の特徴をちゃんと理解することで、相手の魅力的な一面を選択することができるんです。
「カクテルパーティ効果」をご存じでしょうか?ガヤガヤしたパーティ会場でも、人は自分が興味のある音を選択する脳の状態のことです。例えば野球に興味がある人なら、目の前に会話相手がいても、隣のグループの「今年のヤクルトは強いよね」なんて会話が耳に飛び込んできたりすること、ありますよね。
だからこそ、ホメ出しする相手にフォーカスを当てて、「興味の対象」と捉えるべきなのです。つまり、「惚れレンズを装着するぞ」という意識を持つことで、相手のホメポイントが多く目につくようになるということです。
例えば、短歌を書いている歌人は「短歌レンズ」をつけているからこそ、日常に落ちている何気ない発見をすくいあげることができます。
シーフードカレーは海の地獄絵図えんまの母が鍋をみおろす
(穂村弘選『短歌ください』KADOKAWA)
この短歌も、「短歌レンズ」で日常を見ていないと、見過ごしてしまいますよね。
あなたも身に覚えがあるのではないでしょうか。インスタグラムを始めたら、「何か映えるものはないかな?」と「インスタレンズ」をつけて生活を送るようになるし、noteを始めたら、「何かnoteのネタないかな?」と何気ない日常の中から発見を抽出するようになります。これ、すべて脳が「効率的選択」をしている状態なんです。