留学ライフが本格スタート

翌週、3つの講座と1つの語学コースに参加が決まって、私の本当の留学ライフがスタートした。授業の初日、授業内容についていけるか不安だった私は緊張して教室に入った。20代の学生が、50人程、教室にひしめきあっていた。多分、みんな25歳ぐらい年下だ。

でも、コロナでマスクをしているし、日本人は若くみられるから50歳とはバレないかも?と、余計なことを考えながら待っていると女性教授が入ってきた。授業のテーマはSDGs。リサデール教授はその道の専門家で、大画面のスクリーンにカラフルなデータのPDFが次々に映し出され、教授は勢いよく喋り始めた。はっきり話してくれるがめちゃくちゃ早口だ。ニューヨークはみんな早口だから仕方ないけど聞き取るのが精一杯。

この日の授業はサスティナブルデベロップメント(持続可能な開発)に関するもので、グラフが盛りだくさんだった。私は、どのグラフも短時間で書き写そうと、おもむろにノートを広げ、黒とピンクとブルーの3本のペンを両手に猛烈に筆を走らせた。

実は、昔からノートを取るのは得意だ。見やすく書ける自負もある。「絶対にすべてのグラフを短時間で書き写す!先生の早口に負けない!」と、鼻息荒く書き続けた。

すると、一心不乱に書き続ける私の耳に、不思議な音が聞こえてきた。カチカチ、カチン。カタカタ、カチン。一斉に響くその音。不思議な音の正体に気づくのにさほど時間はかからなかった。周りにいた50人の学生のほぼ全てが、パソコンにタイプしながら授業を記録していたのだ。