2022年9月11日、東京・両国国技館で始まった大相撲九月場所。先場所は「敵は新型コロナウイルスにあり」、合計13部屋が休場となってしまった。今場所は無事乗り切れるのか? 横綱・大関・小結のバトルも楽しみな今場所、朝青龍が見つけた逸材はどうなる?など見どころは満載。『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が今場所もテレビ観戦記を綴ります。
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初日には予想できなかった展開
大相撲秋場所は中日を終え、8戦全勝で勝ち越したのは30歳の前頭8枚目・北勝富士ひとり。八角理事長(元横綱・北勝海)の率いる八角部屋の力士だ。師匠として北勝海を育てたのはNHK大相撲解説で人気の北の富士さん(元横綱)なので、孫弟子にあたる。
北勝富士を、1敗の幕内最年長37歳の前頭3枚目・玉鷲が追っている。玉鷲は8日目に電車道と言われる突進の押しで前頭5枚目・佐田の海を破り、初土俵から連続出場記録1456日となる歴代3位の記録を白星で達成した。
2敗は大関・貴景勝、前頭4枚目・高安、前頭6枚目・若元春、前頭10枚目・錦富士、前頭13枚目・王鵬、前頭14枚目・千代翔馬だ。
先場所優勝の小結・逸ノ城は連覇を期待したが2勝6敗と苦戦。関脇・豊昇龍も根性を見せているが4勝4敗。
初日には予想できなかった展開になっているが、これを面白いと思うか、上位陣を情けないと思うかで、後半の大相撲観戦への力の入り方が違ってくる。
トップを走る北勝富士は、最後の仕切りの前に、塩を取りに行った場所で、拳を額や顎にあてるルーティンがあり、いつも借金に追われていた私の父が同じ仕草をしていたので「零細企業の社長が資金ぐりに困った時のポーズ」と思っていた。しかし今場所の北勝富士のルーティンは、大企業のトップが高層ビルの最上階で東京の景色を眼下に見ながら、「ここまで登り詰めたが、ライバル会社のトップに土下座させるまで頑張るぞ」という気合いのポーズに見えてきた。