「人は変われるのだ」と思ったが、変わってはいなかった

横綱・照ノ富士は3敗して、膝の悪さが明らかに分かり、休場してしまうかと心配したが、責任感で相撲を取っている感じが伝わってくる。しかし、照ノ富士は8日目に、私が一番好きな四つ相撲の醍醐味を見せてくれた。

前頭4枚目・錦木を土俵際まで追い詰め、土俵から出ないと分かると、一気に土俵の真ん中に上手投げで転がしたのである。「お見事!」とテレビに向かって叫んだ。

悲しすぎるのは、初日の勝利から期待した大関・正代はなんと7連敗。大関・御嶽海は先場所はコロナの影響で休場したため、カド番は今場所に持ち越したが5敗である。期待した2大関の負けっぷりを見ると、鬱々とした気分になる。

「人は変われるのだ」と思ったが、変わってはいなかった。8日目の正代の対戦相手の関脇・大栄翔は、突き押しが全く相手に効かず、2勝6敗。大栄翔は、正代に勝ちインタビュールームに登場したが、その渋い顔に今場所の苦労がにじみ出ていた。

今場所、私は元大関・朝乃山の姿から、力士には何が大切か深く分かった。朝乃山は、日本相撲協会が決めた新型コロナウイルスのコンプライアンス違反で休場となり、現在幕下15枚目で相撲を取り4勝して勝ち越した。

今場所の初戦の相手は幕下付出でデビューした日本大学出身の注目の川副だったが、朝乃山は寄り倒しで破った。その後の取組からも、上位を経験している朝乃山は前に出る圧力が違うというのを見せつけていた。
正代と御嶽海の圧力は、何処へ行ってしまったのだろう?