●和倉温泉(石川県七尾市和倉町)

大同年間(806~810)に薬師岳の西、西山の湯の谷に温泉が湧き出していたのが和倉温泉の始まりとされる。現在地での開湯は永承3年(1048)で、地名の和倉は「湧く浦」、つまり湯の湧く浦(入り江)の意である。

海面が泡立つのを見て住民は不吉なことの現れだと騒いだが、漁師が船を出してそこに行くと、脚に傷を負った1羽のシラサギが羽根を休め傷を癒していた。漁師が海に手を入れると温かい。それが泡の立つ原因で温泉が湧き出ているのを知った。

2体のシラサギ像。和倉温泉 涌浦乃湯壺(写真提供◎photoAC)

海中に湧き出す温泉は、当初は船で運んで利用されていたが、噴出口を石等で囲って入浴できるようにし、寛永18年(1641)には周りを埋め立てて人工島を造り、湯壺を設け湯島と呼ばれた。さらに橋が架けられて陸続きとなり、明治13年(1880)には島までの海を埋め立て、その後も埋め立てが続いて現在のような繁栄を見るようになった。