●下田温泉(熊本県天草市下田北)

下津深江川で村人が水浴びをしていると、これまで一度も見たことのないシラサギが水浴びにやって来た。シラサギは村人に遠慮するかのように羽音も静かに毎日来てはまたどこかへ飛んで行った。

村でも知恵者と言われる彦松どんがそれを見て「どうもあのシラサギは普通じゃない」と思って、シラサギがいつもじっと水浴びをしている所を調べてみた。すると何と驚いたことに、そこの水だけがお湯になって湧き出ているではないか。

びっくり仰天、彦松どんは「シラサギが、シラサギが……」と言って村中を駆け回った。建武2年(1335)の夏のことであった。別名「白鷺(しらさぎ)温泉」とも言う。

※本稿は、『秘湯マニアの温泉療法専門医が教える 心と体に効く温泉』(中央新書ラクレ)の一部を再編集したものです。