最後のセリフに込めた思い

――『もうじきたべられるぼく』にも通じる思いがありますね。物語が誕生して10年、はせがわさんの「一番世に出したかった本」がいま、書店に並び、多くの読者に読まれています。

本屋さんが素敵な陳列や装飾をして紹介してくださっているのをみて、すごく感動しました。「あぁ、こんなふうに受け止めてもらえるんだ」と。正直、受け入れてもらえるかな、という怖さもあったので。

実は、今回絵本で出版するにあたって、最後のページのセリフを変更しているんです。10年前に描いたときは別の言葉だったのですが、自分の気持ちの変化もあって。ちなみに、TikTokで読み聞かせされている動画は、10年前に描いたセリフで作られています。

『もうじきたべられるぼく』(著:はせがわゆうじ/中央公論新社 )より。母牛を見つめる子牛の「ぼく」の後ろ姿が切ない

いまの時代、生きづらさを感じている方が多く、なかには自ら命を絶つ人もいらっしゃいます。僕の作品にも、ちょっと心が弱っていたり、しんどさを抱えていたりする方からの感想が多く寄せられます。『もうじきたべられるぼく』の子牛が、ただ悲しく母のもとから去っていくのではなく、みなさんにどんなメッセージを託せるだろうか。そう考えたときに、「命を大事にしてね」という気持ちを伝えたいな、と思ったのです。

この本を読んだ方が、「この牛の分まで自分は生きよう」「少しくらい何かあっても、ぶれずに生きていこう」。そんなふうに感じてくださったら、うれしいですね。


もうじきたべられるぼく
(著:はせがわゆうじ/中央公論新社 )

ぼくはお母さんと会えるのか――「たべられること」を受け入れたぼくが、さいごにしたかったこととは。TikTokの読み聞かせ動画が300万回再生された泣ける話、待望の書籍化。 食育にもおすすめ。 https://www.chuko.co.jp/special/moutabe/

▼はせがわさんのこの本にも注目

ふたごパンダのこころコロコロ
(著:西島 三重子 イラスト:はせがわゆうじ/中央公論新社 )

ころんころん。ふたごのパンダがとびたつ先は?「読むとやさしい気持ちになれる」「読み聞かせると、親子でこころが温まる」読み聞かせにも最適な、心温まる物語をお届け。