この物語へのはせがわさんご自身の思い

―――この物語について、はせがわさんはご自身のtwitterで「一番世に出したかった本」とツイートされていました。10年前は絵本の形で出版されなかったのでしょうか。

実は当時、いくつかの出版社さんにお見せして、出版に向けて話が進んだことがあります。でも、「母と会えず、最後に子牛が食べられて終わる」という展開に対して、出版社の方からは「絵本なので、最後は明るく終わる物語のほうが……」いう声もあって。で、いわゆる《ボツ》になったんです。

絵本として出版される機会はなかったのですが、しばらくして、絵本アプリ「PIBO」の社長さんから、「なにか作品を登録しませんか」というお話いただいて。せっかくだからと思い、『もうじきたべられるぼく』を「PIBO」で公開することにしました。

――その後、TikTok上で絵本の読み聞かせ動画をアップするVTuberの「絡苺るぷり」さんの目にとまり、『もうじきたべられるぼく』の読み聞かせ動画が公開されました。「号泣注意」のキャッチコピーとともに、300万回以上再生され、話題になっています。

もう、びっくりでしたね。こんな風に僕の作品が多くの方に届くなんて、想像もしていませんでした。絵本を読む声や間の取り方とかが、なんというかとても柔らかい雰囲気で、物語と合っている気がします。絵本は読まれる方によって印象も変わると思うのですが、自分の絵本とはまた違う、ひとつの作品になっているなぁ、と感じました。

もうじきたべられるぼく』(著:はせがわゆうじ/中央公論新社 )