この記事の目次
〈症状〉妄想や意欲低下など陽性、陰性の症状が 〈原因〉神経が過敏になり発症。体質的な側面も 〈治療〉副作用の少ない治療薬も登場
〈支援〉できたことをほめて無理をさせないこと

〈支援〉できたことをほめて無理をさせないこと

私のクリニックの統合失調症の患者さんの30%は仕事を持ち、25%は併設のデイケアか共同作業所に通い、25%は自宅に引きこもりがちです。この病気の方には、人と一緒に何かをして楽しかったという経験が少ない方が多いので、「人と一緒にいると楽しい」という経験をしてもらうことが大切です。

デイケアへ行くと仲間がいる。「今日も会えたね、××さん」と仲間にあいさつされて、自分の存在を他人に認めてもらうことは、病気になって自尊心が傷ついている患者さんにとっては、大事なことです。デイケアやナイトケアには、パソコン教室や手工芸、調理などのプログラムを設けています。こんなに元気で仲間といられるならいいじゃないか、と病気を受け入れられれば、回復に向かって努力することができます。

家族の方は、できたことをほめてあげてください。傷ついた自尊心を回復するためです。ちょっと片付けができただけでもほめることが大切です。一日も早く立ち直って社会復帰を、と思うでしょうが、第一歩は自尊心を高めることです。回復期には、同じことをやっても、健康な人よりも疲れやすいので、職場では残業などを強いないようにしてください。さらに、夜に寝て朝には起きる、という生活リズムが大切です。生活リズムが崩れると、薬を飲むリズムも崩れて、病気が元に戻ってしまいます。継続的な服用が大切です。

2006年に、障害者雇用促進法が改正されて、精神障害者も対象に加わりました。従業員55人以上の企業は、職員の2.3%は障害者を雇用するよう督励されています。今では、私のクリニックでも、障害者雇用で働く患者さんが増え、病気があっても生きやすい環境は少しずつ整ってきています。