「わたしの大事なものに触らないで」

わたし自身も、ある時
「母が嫌いだ!」
と、叫んでみた。勇気を持って叫んだ。

嫌いだから嫌いだと叫んだのだが、叫ぶことで、初めて本心を言うことができて、最終的には母を好きになりたい!という願いも実はあった。

人を嫌うということは非常に疲れることだ。それが母になると尚更だ。
母を嫌うことが生きづらさに繋がっていると何となく感じていた。
だからどうにか好きになりたいものだ、と数十年、試行錯誤してきたわけだ。

自分が親になり、母に感謝できるかと思ったら予想が外れた。母が産まれたばかりの娘を抱いているのを見た時に一番最初に感じたことは
「わたしの大事なものに触らないで」
だった。わたしはわたしに落胆した。人間失格。
だが、心はどうにもこうにもならないのだ。

出産直後の青木さんと、生まれたばかりの娘さん


一生母を好きになることは難しいのかもしれない、と思った。

その後、母は悪性リンパ腫を患い、4年前にホスピスに入った。
母は嫌いなはずなのに、母が病気になるのは苦しくて、母が死ぬことはとてもとても怖かった。不思議なものだ。