「親と仲直りすると自分が楽になるよ」

わたしは一念発起し、母との仲直りを決行した。
動物愛護の友人である武司さんに言われた
「親と仲直りすると自分が楽になるよ」
という言葉で、重い重い腰を上げた。
親孝行は道理である、と。
道理だとしたら、わたしは随分長きにわたり、道理を外れてきたものだ。

わたしは毎週ホスピスに向かった。
運転する車の中で、母に話しかける言葉や声のトーン、顔つきを、練習しながら向かった。上機嫌な演技の練習である。思えば何十年も、わたしは母に「不機嫌」をプレゼントしていたのだと思う。消えない過去を思い出すと、不機嫌になっても仕方ないと思ってきたが、最後くらい「ご機嫌」をプレゼントしたい。心を変化させるのは難しいが、練習した顔つきや言葉をそのまま披露することは、さほど難しいことではない。
毎週のようにミッションを自身に課して向かった。

○今日は手を握ろう
○今日はマッサージしよう
○今日は娘の85点の答案用紙をみせよう

ミッションが終了すると、途端にわたしは動揺した。
わわわ、用意してきたことが終わっちゃうと、なに喋ればいいの〜

乳児のころの青木さんと、お母さん



「機嫌のよい空気感の中で他愛もない話をする」というのが、最も難しいミッションであることに気づいた。
ホスピスのベッドで横になって点滴を打ちながら微笑んでる母をみながら
わたしは、この人に、何十年も不機嫌を届け続けたことを反省した。


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