これまで段階的に引き上げられてきた年金の支給開始年齢。2021年に行われた高年齢者雇用安定法改正では、70歳まで継続雇用の措置を講じることが企業の努力義務として追加されましたが、こうした背景のもとで定年延長や廃止をする企業も出始め、昨今では定年後の再雇用も当然のようになりつつあります。一方で、定年後の仕事の実態をデータと事例から検証を行ったのが、リクルートワークス研究所で研究員を務める坂本さんです。坂本さんいわく「特に2000年代に入って、高齢期の就業率は反転上昇へ移った」とのことですが――。
定年後も働き続ける潮流が高まったのは2000年代以降
「人生100年時代」と言われる現代。実際に高齢期の就業率は急速に上昇している。日本ではいつから定年後も働く時代に突入したのだろうか。
就業率の推移を確認することでその背景を分析し、過去から現代に至るまでの働き続けることがますます「当たり前」になる将来について展望する。
総務省「国勢調査」を利用し、60歳、65歳、70歳、75歳時点の就業率の推移を追ったものが【図表1】となる。
1980年からの就業率の推移をみると、就業延長が進んだのは実はここ十数年のことである。男性の60歳時点就業率をみると、1980年には79・8%であったが、2000年には70・0%まで落ち込む。
しかし、2010年には74・4%と10年間で4・4%ポイント上昇し、2010年以降はさらに上昇率が高まり2020年時点では78・9%にまで達している。65歳時点就業率も傾向は概ね同様である。
2000年までは就業率が低下しているが、その後反転し、2010年以降急速に就業率が高まっている。
そのほかの性・年齢階層においても、若干の違いはあるものの、おおよそ2000年から2010年までの間に就業率は底を打ち、そこから2020年に向けて急速に上昇基調に転換している。
つまり、定年後も働き続けるという潮流が高まったのは2000年代以降のことであり、特にこの10年でその流れは決定的になったのだといえる。