増えすぎて破綻をきたした多頭飼育の現場。不妊・去勢手術さえできていれば……

保護団体の立ち上げには人生を懸ける覚悟が必要

私が犬や猫の命をテーマに取材を始めたのは、10年に愛犬を亡くしたことがきっかけです。その後、11年に東日本大震災が起こり、被災地域へ帰るに帰れない人たちがいるなか、致し方なく放置されることとなった犬や猫の現実を知り、さらに問題意識を持つようになりました。

当時、日本の犬猫の殺処分数は17万5000匹(11年度・環境省)。とんでもない数です。そこで私は映像を通して、その厳しい現実を多くの人に知ってほしいと考えたのです。

15年に私が監督を務めた映画『犬に名前をつける日』を石田ゆり子さんが観てくださり、ご縁が生まれました。その後、多頭飼育崩壊の現場を取材し、『ザ・ノンフィクション 犬と猫の向こう側』という番組を制作した際に、ゆり子さんにナレーションをお願いしたことで、飼い主のいない犬や猫の現状について彼女と深く話をするようになったのです。

当時から問題意識の高かったゆり子さんが、「どうしてこんなことになるのですか?」「何かできることはないのですか?」としきりに訴えかけていたのが印象的です。

けれど、その時点での私は、飼い主のいない犬や猫を助けるには動物愛護団体を立ち上げるしかないと思い込んでいたのです。それには人生を懸けるくらいの覚悟が必要。自分には無理だと考えていました。