左:高知東生さん 右:橋爪遼さん(撮影◎初沢亜利 以下すべて)
10月4日、「依存症の正しい報道を求めるネットワーク」が主催する「グッド・プレス賞」授賞式が行われました。薬物やギャンブル、アルコールなど、さまざまな依存症を扱った中で、特に公正な視点を持ったとされる記事やメディアが表彰されます。その第二部として「芸能人の薬物事件 ~報道のあり方を考えよう~」と題し、当事者と専門家の座談会が行われました。特別ゲストに、2017年、覚醒剤取締法違反で逮捕された俳優の橋爪遼さん、俳優の高知東生さん、ファシリテーターとして、松本俊彦先生(国立精神 神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研修部 部長)、田中紀子さん(公益社団法人 ギャンブル依存症問題を考える会 代表)が登壇しました。橋爪さんが事件後メディアの前で語ったのは、今回が初めてです。(構成◎岡宗真由子 撮影◎初沢亜利)

前回「「芸能人の薬物事件 ~報道のあり方を考えよう~」座談会 前編」から続く

家族との連絡は全て断ち切って

田中 :遼さんは逮捕された瞬間に、どう思われましたか?

橋爪 :そうですね、「終わった。」ただそれだけです。一方、自分自身の名前はそれほど有名でないから、そこまで報道されることはないだろうという考えもありました。周囲に迷惑をかけるということは思っていたのですが、状況を理解できていなかったんです。留置中は報道の類に一切触れられないので、人伝にすごいことになってしまったと聞かされ、さらに裁判所に向かう時の報道陣の数を見て、「しまった、俺は本当にヤバイ事をした」と改めて思いました。

田中 :なるほど。当時の報道の中にはお父さまが激怒されたというものもありましたが、実際に叱られたということはあったのですか?

橋爪 :そもそも会っていないんです。保釈されてから即、その足で施設へ行ったので、父と会話をすることがありませんでした。母が来てくれて、父の話を聞くことはありました。でもほかの施設もそうなのですが、家族との連絡は、まずシャットアウトするんです。甘えが生じてしまって「帰る」と言うこともできるし、家族の方も「帰りたい」って言ったら、「じゃあいいよ帰ってこい」ってなってしまうので。父も思うことはもちろんあると思うのですが、直接的に何か言われたことはなかったですね。

田中 :先生、依存症を克服する時、しばらく家族と離れるのは、いいことなんですか?

松本 :僕は悪くないと思います。確かに、家族の方が手元に置くことによって逆に回復が進まなくなることは結構あるんですよ。

田中 :家族の方もどうしていいのかわからないっていうのはありますよね。でも日本の司法はどこか浪花節で、「回復施設に入る」ことよりも「家族が監督する」というのが執行猶予の条件になったり、優先順位が高かったりする。それについて先生はどう思われていますか?

松本 :依存症の治療に多く携わっていると、家族の監督こそ治療が遠のくパターンで、「むしろ引き受け人を断ったほうが双方にとってよかったのでは?」と思うことがよくあります。法曹界のそういった家族を重視する判断には医学的には根拠がないのです。彼らの「家族がしっかりやればいい」という昔ながらの価値観が反映されているだけのこと。ちょっと僕は解せないのですよね。