「すみません」から「ありがとう」に変わるとき
田中 :お二人は著名人として、依存症を克服したことをメディアで語られることについてどう思われていますか?やりがい、もしくはプレッシャーを感じる時もありますか?
高知 :そうですね、では僕から。僕が今こうやって、回復し続けてここに居られるのは自分が有名人だったからなのかもしれない。でもその前に、自分の回復に「有名人」が役立ったかって言ったら、そうではないんです。僕は、名も無き本当に普通の人たちから、情熱を持って、100%の善意で、しかも無償で向き合ってもらいました。そこにはひとりひとり、さまざまな職業の方たちがいました。それを超えて「仲間なんだ」と思えた。人と人の心の触れ合いの中で、一番何が大切だったかというと、職業がどうっていうのは関係なかったです。ありのままの素直な心で接してくれる、先ゆく先輩たち、回復されている人たちに包まれながら、今の自分がいます。逮捕されて最初の頃の1、2年っていうのは人に会う度に「申し訳ありませんでした。すいませんでした」って言い続けていて、心のどこかで「これをあと何年言えばいいんだろう?」と思った時もありました。でも先ゆく人たちと出会って、どこからか「ありがとうございます」と言うようになった。そして本当に少しずつ、「ありがとう」って言われることもできるようになった。その言葉に包まれるようになってきたんです。そうなってきた時に、初めて自分自身に本当に向き合うことができた。だから芸能人だから有名人だから、僕はどうしたいということはなくて、先行く人たちから学んだことを日々生かしていく気持ちでいるだけですね。
松本 :高知さんの話からも、やっぱりそうなんだなぁって思ったのは、「すみません」と謝らされてばかりの時には前に進めないし、内省とか回復もなかなか始まらないということですよね。
田中 :遼さんはどうですか?
橋爪 :高知さんの話が素晴らしすぎたので、先にしゃべっといたほうが良かったです(笑)。
あの、今の僕の感覚としては、自分が有名人であることはあまり意識していないです。僕がやりたい、お芝居というものと回復は僕の中では結びついていない。ただ一緒に進んでいける人達をいっぱい作っていけたらいいなという感覚はあります。自分が落ちた時に助けてくれた人が居たし、もし自分が逆の立場になったら、まあ僕に何ができるかというと、話を聞くことぐらいしか出来ないけれども、それができたらいいなという気持ちでいます。