ゴルフを始め、娘の夫とラウンドするように

がんが発覚した時、自分のために使う時間を確保できていたことも幸いでした。

3人目の孫ができるとわかり、教員生活が負担になると考えた私は、61歳を迎えたのを機に大学を早期退職しました。

しかし最後まで医師として患者さんと向き合いたいという思いもあったため、妻のクリニックで仕事を続けることに。大学に勤務していた頃より時間や気持ちにゆとりがあったので、終活のためにはよかったと思います。

私には医師になった娘が3人おり、2人の男の子と、2人の女の子の孫がいます。

多忙な娘たちの力になりたくて、保育園の送り迎えを率先して行うようにしたのですが、孫たちと過ごす時間を増やすことにもつながりました。患者さんの診療と孫の世話は、最後まで続けたいと思っています。

また、好きなことに費やす時間も充実させるよう心がけました。がんが全身の骨に転移していると知った時点では、大好きなテニスもこれまでかと落胆したのですが、幸いにして20年の春から始めた治療法が功を奏し、経過も順調でした。以前ほど力強くボールを打ち返せなくなったとはいえ、続けることのできる体力があったのです。

そこで週1回だったテニスの日を週に2回に増やします。そればかりかゴルフを始め、娘の夫とラウンドするようになりました。

余命を宣告されたら人生を縮小しなければと考えてしまいがちですが、時間が限られているからこそ、やってみたかったことや、新たなことに挑戦すべきだと思います。楽しい、と感じれば免疫力が高まる。実際、生きる気力も湧いてきました。

ただし、持ち物は増やさないほうがいいでしょう。私の趣味は鉄道模型ですが、どんなに欲しい模型があっても買わないと決めたのです。今あるコレクションに関しては、素質のありそうな孫に「この模型は35万円もするんだぞ」などと伝えながら託すつもりです。(笑)

また、亡くなった後の家族の負担はなるべく減らしておきたいものです。私は自宅の屋上での家庭菜園も趣味にしていましたが、故人が丹精込めて作った菜園を壊すわけにもいかないと家族が困惑することは目に見えています。そこで自分で処分することにしました。