暮らしの保健室を訪れた女性の相談に応じる秋山さん(中央)(写真提供:暮らしの保健室)
できるだけ長く、自立した生活を送りたい――。そう願っていても、年を重ねるにつれて足腰が衰え外出が億劫になったり、夫を見送って一人暮らしになったり、心配の種は増えるもの。そうした生活の不安を抱えるシニアを、さまざまなアイデアや新しい工夫で支える企業・団体があります

情報の整理を手助け

年齢を重ねるごとに心配になるのが、やはり健康や医療、介護のこと。病院に行くほどではないけれど気になる。介護や在宅医療について、誰に相談したらいいかわからない――。そんなとき、気軽に話を聞いてくれる場所があればいいのに、と思ったことはないだろうか。

高齢化が進む都内の大規模団地の一角で、11年にスタートした「暮らしの保健室」。誰でも予約なしに、無料で健康や介護、暮らしのなかの困りごとを相談できるスポットだ。大きな特徴は、看護師や栄養士など、医療の専門職が常駐していること。

木をふんだんに使った室内に相談窓口があり、ボランティアスタッフによるヨガや手芸の教室、ランチ会(コロナ禍で休止中)などが開かれる地域のサロンとしても親しまれている。

創設者の秋山正子さんは、東京・新宿区で20年以上、訪問看護師として活動してきた。「さまざまなご家庭を訪問するなかで、医療や介護の必要な情報とうまくつながれず、本人や家族の望む医療・介護を受けられない人が意外に多いことに気づいたのです」。

地域の人が気軽に立ち寄れて、早い段階で適切な情報や必要な支援に結びつけられる場所を作れないだろうか。そう考えていたある日、団地の空き店舗を「安く貸してもいい」という申し出があった。「まずは始めてみようと、ご厚意に飛びつきました」。(秋山さん)

運営には、国や自治体からの助成金をフル活用。名称は、学校にある保健室が街の中にあってもいいじゃないか、と考えてつけた。文字通り、地域の人の「健」やかさを「保」つ「室」として使ってほしいという願いが込められているという。