何を考えて料理を作ってきたのか

人間は、毎日、自分が一番必要としているものは忘れるようになっています。

一番必要なのは空気と水ですが、そんなことは忘れています。反対に、めずらしいものや見たことのないものには興味を持ちます。飲食ならそれが「おいしい」の評価になります。

しかし、それが売れるとはかぎりません。フランス料理はおいしい料理の代名詞になっていますが、フランス料理で世界的なチェーンになったところはないと思います。

おいしいを「飽きない」とか「一番たくさん口に入れるもの」と考えると、一番おいしいのは空気と水です。けれど、空気や水の「味」は出せません。すると、ぼくの考えでは、おいしいものの特徴は「まずくない」「いやな味がしない」「いやじゃない」ものとなります。

ぼくは、そう考えてサイゼリヤの料理を作って売ってきました。つまり、なるべく料理に手をかけないのが基本です。味をつけてはいけないんです。味をつけるとまずくなっちゃいます。