たくさん売ることを考えると「おいしい」の定義が変わる

マクドナルドの藤田田(ふじたでん)さんも、そのことに気づいていたのだと思います。マクドナルドのパティには味がついていないはずです。だから売れる。パティは肉だけです。塩も胡椒もにんにくも入ってない。わかっている人はわかっているんです。

サイゼリヤもなるべく味をつけないで提供しようとするから、素材を追い求めることになる。そして、欲しいものがなければ、自分たちで作ろうということになる。だから、サイゼリヤにはファームがあるんです。

従業員にほかの産業に劣らないきちんとした給料を出す。そのためには、商品が売れなければならない。どうやってたくさん売るか。

それを考えると、「おいしい」の定義が違ってきます。たくさん売るには毎日食べてもらわなければならない。毎日食べ続けられるものでなければならない。「すごくおいしいけど、明日もとなると、ちょっと」となるフランス料理はおいしくはないのです。

ぼくのことは、加藤さんがご著書で書いてくださいましたが、イタリア料理を選んだのは、毎日食べても飽きない料理だったからです。

【写真】サイゼリヤ一号店のメニュー。手書きで書かれている(写真:『「おいしい」を経済に変えた男たち』より)