万作師が生涯連れ添う夫人は、詩人阪本越郎氏(高見順の義兄であり、永井荷風とも縁続き)の令嬢でご自身も詩人の若葉子(わかばこ)さん。そう言えば堀口大學先生の令嬢はすみれ子さん。やっぱり詩人のつける名前は凝っている。

――ほんとだ。西条八十の娘さんは嫩子(ふたばこ)さんですからね。大學さんと言えば、帝国ホテルの何かのお祝いの会に呼ばれて、倅(野村萬斎さん)と二人で小舞を舞ったことがありましたよ。

家内は西洋館に住んでる娘で、僕はと言えば純日本家屋で育ってますから、芝生のある家というのに憧れた結果かもしれませんね。そういうモダンな家からお嫁に来て、何かとしきたりの多いところでかなり大変だったとは思います。

とにかく『釣狐』を演じるとなると、食事をしていても、もう狐になり切ってますから、クッと匂いを嗅いだり、フッと振り向いたりする動作で、びっくりしていたようですよ。(笑)