長谷川 ひとくちに認知症といっても、いろいろなタイプがあるんです。加齢により発症するものは、基本的に進行がゆるやか。お父さまの場合は、脳梗塞や脳出血がきっかけとなって発症する脳血管性認知症の可能性がありそうですね。
ところで、お母さまの様子が少し変だなと気づかれたきっかけは?
岩佐 私は18歳で上京したのですが、寂しさもあって母と毎日のように電話で話していました。ところがある時から、母が同じ話を何度も繰り返すようになって。単なるもの忘れかなと思っていたら、そのうち記憶自体が飛ぶようになったのです。
長谷川 お母さまと密に連絡を取り合っていたからこそ、早めに気づいてあげられたんですね。
岩佐 そうだと思います。
長谷川 専門医の立場から言いますと、できれば認知症予備軍である「春」の段階で受診していただきたい。ここで適切な対処をすれば、発症を止められる可能性があります。ただ、これだけ高齢化が進んでいるのに、認知症を診ることができる医師がまだまだ少ないのが現状です。
岩佐 私も専門医とつながるまでが苦労しました。母の場合、頭や目が痛いなどの症状も混じっていたので、内科や眼科に行ってみたり、脳神経外科に連れて行ったり……。結局、3年かかってもの忘れ外来を受診し、MCIの診断がつきました。
長谷川 認知症の場合、質問形式の検査に時間と手間がかかるため、大きな病院では対応できないケースもある。最初から、専門のクリニックやもの忘れ外来、脳神経内科、老年病科で診てもらうことをおすすめします。