岩佐 母の場合は、たとえば着替えさせようとしたら怒って暴れたり。でもよく考えると、母にとってはその部屋が寒かったんですね。困った行動を起こす理由が徐々に推測できるようになりました。

長谷川 そういう細やかな接し方ができるのは、実の娘さんだからかもしれないですね。ぜひお伝えしておきたいのは、怒りっぽい、暴力をふるうといった行動は、薬でコントロールできるということ。たとえばメマリーという薬を飲むと、攻撃的になって困っていた患者さんでも穏やかになります。

岩佐 母の場合は使いませんでしたが、そういう薬があると知っていれば安心ですね。

長谷川 接し方も非常に重要です。身内の方には、「今日は何曜日かわかる?」「私が誰だかわかる?」などと、試すようなことを言わないでいただきたい。本人が一番不安を感じているのに、いっそうストレスを与えることになります。

逆に、「今日は火曜日だね」「次女の××だよ。久しぶり」と情報を伝えれば、安心につながって会話も生まれるのです。

岩佐 私も当初はコミュニケーションがうまく取れない時がありましたが、どう接したら母が機嫌よくしてくれるのかが理解できてからは、介護がグッとラクになりました。

<後編につづく

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