若年性アルツハイマーの母親と同居する岩佐まりさん(左)と認知症専門医の長谷川嘉哉先生(右)
2013年から若年性アルツハイマーの母親と同居する岩佐まりさん。2年前には父親も認知症と診断され、ダブル介護が始まりました。認知症専門医として訪問診療を行う長谷川嘉哉先生とともに、本人や家族が病とうまくつき合っていくために必要なことを語り合います。
(構成=篠藤ゆり 撮影=洞澤佐智子)

<前編よりつづく

在宅介護で必要なのは心強いケアマネジャー

長谷川 私は、介護は患者さん第一ではなく介護者第一でいい、と提唱しています。よく、「本人が嫌がるからデイサービスもショートステイも利用していません」とおっしゃるご家族がいますが、嫌がっても連れていっていい。行ってしまえばスタッフが上手に対応してくれるので、喜んで通うようになるものです。

介護する人が自分の時間を持てないと、精神的に追い詰められ、結果的にきついもの言いをしてしまうなど悪循環が生まれます。一緒にいる時間を減らすのは、お互いにとって必要なことなんです。

岩佐 母がショートステイを利用し始めて、私に時間ができたことで、世界が明るく感じられるようになりました。小旅行にも行けるし、夜に友人と食事を楽しめる。泊まりがけの仕事もできるようになりました。デイサービスはあっても、ナイトサービスはありませんから。

長谷川 その通りです。実は、私たち訪問医や看護師の力だけでは、自宅での生活を長く続けていただくことはできません。特に重要なのが、ケアマネジャーの存在です。医療従事者とは別の視点でご家族を精神的にサポートし、必要な情報を提供してくれる優秀なケアマネと出会えると、本当に心強い。

岩佐 私もいつも助けられています。仕事をしているため、事業所の営業時間内の電話対応しかしてくれない方だと、なかなか厳しい。でも最初に紹介していただいた方は、家族の実情に合わせて、メールでいつでも対応してくださって。

月1回行うケアプランの定期調査では、家に来て必要な情報をその都度教えてくれます。父のケアマネさんも、気になることがあるとすぐに連絡をくれるので、離れていても安心なんです。